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  • teotorriatte1015

タラブックスとの出会い

2018年10月、私は仕事で九州を訪問しました。二泊三日の旅程です。羽田から搭乗したANAの福岡行きの便で、私は機内誌「翼の王国10月号」を何気なく手にしたのですが、その号の3番目の特集記事「世界で一番美しい絵本を作るタラブックスを訪ねて 南インド・チェンナイへ」は他のどの記事よりも私の目を引きつけました。なぜなら、対馬市への出張のわずか3日後(!)に、私はチェンナイへ向かうことになっていたからです。チェンナイには私のインドとの仕事で非常に重要な政府機関の本部があり、既に3度ほど訪問していて馴染みのある街でした。それもあって街の名前が目に飛び込んで来たのかもしれません。


チェンナイの滞在は3泊5日(機内1泊)で、2日目と3日目は予定で埋まっています。最終日は深夜発の便ですので丸々一日が予備日、何か不可抗力で予定が崩れた時の為に空けてあります。ですので、何事も無ければ予定のないフリーの一日が出現するわけです。幸いにも活動初日のアポは無事終了し、翌2日目もどうやら何とかなりそうな目途が立ちましたので、今回出張にご一緒したプロジェクトリーダーのO先生に、持参していた「翼の王国」をお見せし、「予定が滞りなく終了したら予備日にこの出版社を訪問してみたいのです」とお伝えしました。「ボクも行ってみたいです」と言うのがO先生の答えでした。そもそもO先生は柔軟な発想とフットワークの軽さをお持ちなのでした。


さて、予定していた訪問も突発的に入ったアポも無事完了し最終日を迎えました。いよいよタラブックス訪問です。

我々のホテルは市の中心部南西に位置しており、南部にあるタラブックスもタクシーで30分ぐらいと結構近いようでした。ホテルで手配してもらった車で午後2時頃出発すると、チェンナイ(かつてのマドラス)の街はインドとしてはまずまずの、(そこそこ流れている)交通量でした。直線距離にしてたったの4-5kmでしたが、そこはそれ、小一時間かかってようやく本社住所の近くまでたどり着きました。ところが商店と住宅が混在するようなエリアにそれらしい建物は見当たりません。運転手さんがあちこちで問い合わせてくれて、ようやくTarabooksの建物を見つけることが出来ました。


世界で一番美しい絵本を作る出版社のビルは、思ったよりもモダンで、思ったよりもひっそりとした場所に、白っぽい角張った姿でたたずんでいました。中は外見以上に広々としているばかりか、吹き抜けの効果もあってとても明るく、清潔な印象です。間隔を大きく取った書架に書籍が展示されていて、書店というよりはちょっとした画廊というイメージでしょうか。奥にあるゆったりとしたスペースでは、3人の女性が打ち合わせ中。反対側では長身の若者がデザインの相談?をしていました。彼は何かの助成金を使って日本でワークショップを開催(参加?)して来たということから、大の日本びいきで、我々二人も聞いたことがないような小さな町の名前をいくつもあげて、その美しさを語ってくれました。残念ながら我々が無知故に、ちっとも共感しないことに少しがっかりしたようで気の毒でした。

メールでアポを取ったスタッフの方に、しばらく店内を案内してもらい、手作りの書籍の美しさに感嘆の声を上げていると、奥の方で打ち合わせをしていた女性の一人が申し訳なさそうに、「あなたたちが日本人だって聞いたから…」と話しかけてきました。聞いてみると、翌月に日本で開かれる日本政府主催の「男女機会均等に関する」シンポジウムに招待されている共同経営者のお二人(奥で打ち合わせをしていた3人のうち2人がそのギータ・ウォルフさんとV・ギータさんでした)がビザの申請に必要な書類の準備をしているところだそうで、「日本からの招聘状にある説明がどうしてもよく分からないので、日本語も併記されているから読んで教えてくれないか?」という事だったのです。もちろん二つ返事でOKしたのですが、日本に限らず行政文書の悪いところで、まわりくどい書き方に日本人2人は読解にちょっと苦労しました。それでもどうにか無事読解・説明・記入を助けることが出来ますと、胸をなでおろした共同経営者のお二人は申し訳ないほど感謝して下さり、何冊か書籍をプレゼントしてくれました。それから私たちは自分たちで何冊か美しい絵本を購入しました。ちょうど20%OFFのセールでしたので、もっと購入したかったのですが、今回の出張で紙ベースの資料を沢山もらったこともあり、泣く泣く数冊にセーブしました。


ただ訪問しただけでなくちょっとだけお手伝いが出来たことで、私はTarabooksのファミリーの一員になったように勝手に思い込んでいます。彼らの少数派のアーティストや伝統文化に焦点を当てるアプローチと我々の本業に親和性があるように思えたことも大きいでしょう。いずれはどこかの国の少数民族の伝統的知識や民話を絵本として出版したいなどと考えているのですが、まず、Tarabooksの事をもっとよく知ろうと考え、彼らの商品(作品)を売る店を始めることにしました。日本語版もラインアップに加えることを考えて、Tarabooks社の本を和訳して出版している日本の出版社とも取引をスタートした、というのが現状です。


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